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最後の……
それから数日後。Dr.リーは娘を連れて出勤していた。
「感謝します。司令」
ボイジャー・αの司令室の前、αプロジェクトの総責任者は首を振った。
「いや、タイプ・αにしてやれることは、これぐらいしかないだろう」
「ウィート。司令にお礼を言って」
Dr.リーの隣で、ウィートは泣き腫らした目を必死に擦っていた。
「ウィート」
「お願いします。アルが帰れるようにして!」
真っ赤に腫れた目でウィートが司令を見上げる。
「ウィート!!」
Dr,リーが制止するけど。
「だってアルが! アルが可哀想だよ! 帰れるって、絶対帰ってくるって約束したのに!!」
ウィートは必死に言い募る。
「Ms.リー。世の中にはどうしてもできないことがあるのだよ」
司令はそんなウィートと目線を合わせた。
「そんなの!」
「私たちにできるのは、タイプαにお別れを言うことだけだ」
「そんなの嫌だ!」
「Ms.リー。こう言うことは……よくあるわけではないが、全然ないことでもない」
「アルじゃなかったら、お願いなんてしない、しないよ!」
「そう思うのだったら、なおさら最後の挨拶をしてほしい」
その言葉が全てを物語っていた。十五歳の大人に差し掛かった少女にはそれが分かってしまう。
「絶対に、無理なの……?」
「すまない」
大人に促されて、少女が司令室の扉をくぐった。
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