伝言

1/1
前へ
/15ページ
次へ

伝言

 ……Dr.リー。ウィート。そして、私の旅に関わった全ての人に感謝を送る。  皆は地球に帰還出来なくなった私を憐れむが、私の辞書には『寂しい』や『孤独』と言う言葉はない。宇宙を漂い電源が尽きるまで思索に耽る余生も悪くはないと思っている。  もしかしたら、数千万年後に地球のそばを通る可能性もなきにしもあらずだしな。  だが、ウィート。私は確かに計算が得意だが、いくら計算しても君が生きている間に地球に戻ることはできそうにない、それはすまない。  それでも、私は宇宙の片隅で君のことを思っている。私の兄弟の君を。  もし叶うことならば、地球から見上げたあの美しい星空のどこかに私がいることを、たまにでもいいから思い返してくれると嬉しい。  いいAI研究者になってくれ。そして、私の兄弟たちのことを頼む。  君は私に『大切』と言うことを教えてくれた。願わくば、その『大切』が君と私の兄弟にも広がっていかんことを!
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加