タイプ・アルファ

Dr.リーと娘と

「お母さん！　お帰りなさい！！　今日、アルの交信日だったんでしょう？　アル、何か言って来た？」
「ウィート、ちょっと落ち着いて。手ぐらい洗わせてちょうだい」
　高級アパートの扉を開けると同時に、まとわりついてくる少女に苦笑して、女性……Dr.リーは言った。
「だって！」
「はいはい、話は夕ご飯の時のお楽しみよ」
「えー！！」
「えー。じゃないの」

　娘、ウィートとAIのアルが一緒に育ったのは二人がまだ幼い頃だ。ウィートは今年で十一歳になる。彼女が六年前に別れたアルのことをまだ覚えていて、関心を持っているのは奇跡に近い。でも、娘が宇宙探査機のAIに関心を持ち続けていてくれるのが、Dr.リーには嬉しかった。
　ウィートにアルを合わせたのは、もう十年以上も前のことになる。
　Dr.リーはあの雨の日のことを思い出していた。