始まり

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始まり

「ああ! すごい雨ね。アルが濡れちゃう」  十一年前、Dr.リーは郊外の一軒家に住んでいた。幼い子供に庭のある生活をさせたかったのだ。  でも、その日はあいにくの雨。駐車場から家まで屋根はない。 「Dr.リー。傘を差しましょうか?」  小脇にそれなりの大きさのロボットを抱えながら、傘を差すのは結構難しかった。Dr.リーはついてきた部下の提案に頷こうとして。 「そしたらあなたが濡れちゃうじゃない」  苦笑してみせた。 「大した距離じゃないし、走るわよ!!」 「お帰りなさい。Ms.リー」  住み込みメイドに迎え入れられて、濡れた二人の科学者はとりあえず雨水を振るい落とす。 「ただいま。ウィートは?」 「お嬢さんなら、もう少しで目を覚まされると……そのロボット、それが例の?」 「ええ。前に話した、宇宙探査用人工知能のプロトタイプ、アルファよ」  メイドは興味深そうにDr.リーの差し出したロボットを見る。 「へぇ。普通のロボペットに見えますけど」 「まあ、見た目はね。でも、中身は高性能。まだ起動してないけど……」  と、リビングから赤ん坊の泣き声がした。 「ウィートちゃん、起きたみたいですね」  研究員が顔を引き攣らせた。子供の泣き声になれてないのねと、心の中で思いながらDr.リーはリビングに向かった。 「二人の赤ん坊の対面といきましょうか」
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