ただのAIでも

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ただのAIでも

 あの日から、十一年経つ。 「お母さん! 今日はお祝いなの?」  テーブルの上に並べられたご馳走の数々に、目を輝かせたウィートがDr.リーを見上げる。 「そうよ。今日はね、アルがプラネット・ナインについた記念日」 「じゃあ。アル、もうすぐ帰ってくる?」  娘の無邪気な質問に、Dr.リーは苦笑した。 「これからプラネット・ナインの調査しなくちゃいけないから、アルにとっては今日が始まりなのよ」 「えー、だったら来年帰ってくる?」 「あなたが大人になる頃には帰ってくるわ」 「わたしが大人になるまであと七年もあるのに?」 「言ったでしょ? アルは今すっごく遠い所にいるの。電話するだけでも、三日もかかるような所にね。帰ろうとしたってなかなか帰ってこれないのよ」 「……アル、一人で寂しくないかな……」  ウィートはさっきまでの元気が消えてしまったかのように、下を向いた。 「やることはいっぱいあるから、忙しくて寂しいなんて考えられないと思うわ」  だから大丈夫だと言って、Dr.リーは娘の注意を食事に向けさせた。  でも、本当はDr.リーも娘と同じ気持ちだった。たとえ、相手がただのAIだと娘より深く分かっていたとしても。
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