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夏の日の虹
芝生の敷かれた家の庭に二人の子供がいる。
「アル! お水出すよー!!」
人間の子供が蛇口を捻ろうとしていた。彼女は五歳になったばかり。
「毎分20mlの水量が必要ですよ。ウィート」
水撒きホースの口を固定して、ロボットが振り返る。
「また変なこと言ってる! 蛇口何回回すかでしょ? 五回半! 覚えてるくせにー!!」
「ウィートにはAIジョークが通じません。Dr.リー」
初夏の光の中、庭に出たDr.リーは笑う。これが、子供二人が一緒に過ごす最後の日と知っていても、自分は笑えるのだと考えながら。
「ほら! ママ! お水出すよ! 今日も虹、作れるかなぁ?」
「太陽の位置と風向きはきっかり計算済みです」
「アルがそう言ってる。ウィート、GO!」
『GO!!』
人間とAI、二人の子供の声が重なり、蛇口が捻られ、勢いよく流れる水がホースを生き物のように見せる。散水ノズルからシャワーのように水が吹き出し、庭に虹を作った。
「うぁあ! 虹だー」
駆け寄ったウィートが虹に手を伸ばす。
「ちゃんと計算通りですよ。ウィート」
アルがその光景を普段どうりの表情で見ている。毎年夏に繰り返してきた子供たちのその風景は今日で終わりだ。そう思うとDr.リーは涙が流れるのを止められなかった。
「アルの計算はすごいね!」
虹を掴もうとしていたウィートが、満面の笑みでアルを振り返る。
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