3人が本棚に入れています
本棚に追加
娘の決意
それから、一年が過ぎた。
「お母さん。おかえりなさい……どうしたの? 嬉しそうな顔して」
十二歳になった娘に、Dr.リーはいい知らせを告げた。
「ウィート。今日、アルがプラネット・ナインの調査を終えたのよ!」
Dr.リーの言葉にウィートの顔が、パッと輝いた。
「じゃあ!」
「ええ、アルは五年後には帰ってくるわ!」
「やったー!! アルが帰ってきたら、また一緒に暮らせるよね?」
でも、娘の無邪気な言葉にDr.リーは娘に現実を突きつけるべきなのかどうか、迷った。
アル……タイプ・アルファは全人類共有財産の中に入っている。人類、を理解させるため。そして常に人類にとってプラスになる選択をさせるため、そのためにアルファを娘と一緒に育てた。
私の娘に人類を代表させたのだ。
それは、人の子とAIとの親だった……同時に二つを育てていた自分のエゴではないと、否定できるだろうか?
そして、地球に帰ってきても、アルはもう私たち親子の家族には戻れないのだと、娘に言うべきなのか?
「お母さん? ……やっぱり、アルはうちに帰って来れないの?」
娘の質問になんと答えようかと考えていたのは、多分数秒に過ぎない。でも、ウィートはその沈黙の意味をしっかり理解したようだった。
「ウィート?」
それは確かに娘の成長を思い知らせる。
「わかってるんだ。アルは……色んな人のもので、わたしの兄弟には戻れないんだってこと」
「ウィート。アルは宇宙に行ってもあなたの兄弟よ!」
「でも、アルのうちはもうわたしたちの家じゃない。お母さん、私決めたよ。私もお母さんと同じAI研究者になる! そうすれば、アルとずっと一緒にいられるでしょ?」
「ウィート……。それは、本当にあなたの意志? 無理する必要はないのよ?」
「だってアルは私の兄弟だから。これから生まれるアルの弟たちも、私の兄弟でしょ? ボイジャーシリーズに乗るAIたちに、家は地球だよ、いろんな人がみんなのこと思ってるって……言い続けてあげなくちゃ。それがアルの兄弟だってことでしょ?」
「ウィート」
「お母さんがAIを作ったんだから、それぐらいわかるよね?」
「……ええ、そうね」
最初のコメントを投稿しよう!