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 妊娠十五週目。智恵子は、純一と共に産婦人科に来ていた。  新型出生前診断。胎児の染色体異常を調べる検査だ。高額だが、自分達の高齢出産というリスクを考えて、受けた方が良いだろうという結論に至った。  この検査を行う為には、夫婦揃ってのカウンセリングを要した。何らかの異常が見付かった場合にどうするか、専門家の指導のもと、夫婦で話し合う必要があるからだ。  検査で分かる染色体異常は、大きく分けて三つとの事だった。ダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群。いずれも、投薬や手術で容易に治るものではない。 「もし、陽性だって言われたらどうする?」  血液検査までの間、待合室で尋ねてみる。純一が「そうだなあ」と言った。 「可能性がゼロじゃない限り、考えておかないといけないとは思うけど。でも、迷いがあるっていうか」 「そうだよね、私も」 「智恵子はどうしたいの?」 「え、私? 私はね」  そこまで答えて、言葉に詰まる。  この検査を受けて陽性になった夫婦は、中絶という判断を下すケースが多いと聞いた。今後の生活の事を考えれば、気持ちが分からない訳でもない。  しかし、やっとの思いで妊娠した我が子だ。生きている命だ。安易に捨てる事もできない。  智恵子は天井を仰ぎ見た。正解が分からない。だからこそ、答えはすぐに出そうもなかった。
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