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妊娠二十二週になった。障害のある子どもを育てる覚悟は決まらない。だからといって、堕胎する選択も取れない。
手当たり次第、本を読んだ。インターネットでも調べた。障害とうまく付き合う方法、今後考えられるリスク。とにかく、色々な情報を掻き集めた。
お腹の中の子が障害児どうかは、まだ分からない。今は「陽性の疑い」だ。羊水の検査をして、初めてはっきりと確定される。
それなのに、智恵子は未だ、検査を進める決心ができなかった。検査をしたら最後、様々な現実と向き合わないといけないかもしれないと思うと、どうしても気乗りしなかった。
それからまた、一週間が経過した時だった。
「お腹、痛い」
夕食を食べている最中に、突然、腹痛に襲われた。隣に座っていた純一の腕を、強く握り締める。下腹が、鈍く疼く。
智恵子は、すぐさま病院に向かった。お腹の中の子どもに何かがあったのかもしれないと思うと、気が気でなかった。
痛みで冷や汗を流しながらも、智恵子は祈った。どうか何事もありませんように。単なる腹痛でありますように。
ただでさえ、障害を持っている可能性のある子だ。これ以上、大変な思いはさせたくない。
最近はずっと、障害児を産み育てる事ができるかどうか考えていた。それなのに、いざその命がどうにかなるかもしれないと思うと、たとえ障害があったとしても、無事でいて欲しいと祈ってしまう。生きていて欲しいと思う。
智恵子の中で、障害児の母になる覚悟は、知らぬ間に決まっていた。
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