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気づけばメッセージアプリの着信音が鳴っている。もうお昼休憩の時間か。
「もしかして、仕事の邪魔した?」
出るのが遅かった俺を気遣って、美穂が申し訳なさそうに話し始める。約束通りで自分の顔が映るようにしてくれている。恥ずかしがってできない彼女がここまでしてくれてるんだ。
俺だってやれる。
「いや、少し先に休憩入ってた」
昔の俺ってどんな風に笑ってたかな。あの時みたいに悪びれもなく笑ってみせたつもり。
「無理しなくていいよ。仕事しようなんて、それだけですごい」
「ふふ、怒らないんだ」
「……」
「ん? どうした?」
元気なさそうだね、と心配そうに俺の顔が見ている。美穂がいないから、と戯けて返す。
「そうだ! 絶対に元気が出る魔法の言葉言ってみてよ」
「え? なになに?」
「ふふ……私のことどう思ってるの?」
「好きだよ。愛してる」
これで合っているのか、不安になってくる。些細なことでも気にせずにはいられない。
「悟……私もだよ。好きなの。愛してる」
へらへらと笑っている彼女は、どうして画面越しにいるんだろう。
「今夜は長い夜になりそうですねぇ」
「え? どう言う意味?」
「覚悟しとけってことだよ」
周りに聞こえたらどうするの、周りいなさそうなんだけど、と他愛のない言い合い。
これからどうなるかなんてまだ考えたくないけれど、早くこの夜が来て欲しい。嘘偽りの無い愛をこの手にするんだ。
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