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空に彷徨う愛の言の葉
次の朝、いつも通りに目覚めたはずなのに、腕の中には例のお寝坊さんはいなかった。
恥ずかしがってるだけだと良いんだけどなぁ、と活動し始めたばかりの頭で考えながら、カーテンを開け放ち、初夏の優しい日差しを浴びる。
「美穂ー? おはよー」
いそうな所を探しても妻の形はどこにも無かった。
早番だなんて聞いていないが、話題に上らなかっただけの可能性もある。絶対言わせる方法なら、いくらでもあるが、無理やり言わせるようにしたところで何だと言うのだ。
「お弁当どうしたんだろう」
今日から俺が作るものだと思っていたが……。
冷蔵庫を開けてみると、俺用だと思われるお弁当箱がバンダナに包まれて入っていた。
そんなに早く起きたのか……もしかして眠れなかったんじゃ、と手の込み具合で判断しようと考えた。
麻婆茄子とエビチリ炒飯、デザートに杏仁豆腐がついていた。
なるほど、今日のお昼のお弁当を昨日から作っていたわけか。てっきり、手際を良くするための練習かと。
仮にも彼女も、昨年度までは営業部に所属していたわけだけれど、すっかりその面影を失くしてしまったようだ。
「出先の車内で中華は冒険だな」
絶対に当人には見せられないが、笑ってしまう。可愛らしいったらありゃしない。
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