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死を司る神の御姿
美穂は言っていた。死神はいつも近くにいて、その存在を忘れていることに気づいたら、側にいるかどうか確かめてしまうんだ、と。
それまでの俺の中の想像の死神は、鎌を持ってひょろひょろと浮かんでいた。年の離れた妹が持っていたタロットカードに描かれていた、ごくごくありふれた風貌を思い浮かべていた。
結局、Lサイズのピザとコーラ、そしてフライドポテトが30分もしないうちに届いた。
目の前の彼女は、どこか地に足がついていないようだった。それはそうだろう。いつも悩みなんて一つも無いような顔をしている夫が、隠す様子もなくさめざめと泣くのだ。どうしたら良いのかわからないのだろう。機嫌の悪くなった親をあやす子どものように、わざとはしゃぎ回っているように映る。
「レジャーシート敷いてみよう! ピクニックみたいで楽しそう」
自分に向かって笑いかけてくれる妻を見る度に、胸がざわめいた。危険を察知したような、愛に焦がれたような。不純物が入り混じって、抽出が難しくなってしまった。
あんなに真っ直ぐだった俺の中の気持ちは、どこに行ってしまったんだろう。今すぐにでも走って抜け出して、探しにいきたい。
好きなのに、愛しているのに、それは確かなのに。それよりずっと、愛されたい、助けてほしいと、叫びたくて仕方がない。
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