死を司る神の御姿

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「久々にこんなの食べるね?」 「うん、いつも体に気を遣って作ってるし」  少しでも長く生きることが人の幸せなんだと疑っていなかった。だからこそ、薄味にしたり、栄養バランスを考えたり。一秒でも良いから、美穂と過ごす時間が続けば良いって願っていた。 「ああ! 危ないよ!」  ぼんやりとしていたら、手掴みしていたピザ生地からチーズだけが重力に従順に落下しようとしていた。  受け止めようと、美穂が手を伸ばしてくる。俺の手と重なったと同時に、容赦なく降り注がれる、生温かいそれ。  二人して笑ったのはいつぶりだろう。垂れてしまうからと手を握り合ったまま、口元に引き寄せ、下唇で掬うように口に運ぶ。  そちらに夢中になれば、お互いの体勢なんて考え無しで、抱き寄せる形になる。  その時知ってしまった。  死神はチーズでドロドロになっているんだ、と。肺を潰されるような突然の重みとエロティックな不幸の薫り。  こっちへおいでと幻が呼んでいる。  このまま、生気の全てが吸い取られてしまえば、どんなに良いだろう。果たされない誓いなんて、無かったことにしてほしい。  嗚呼、俺なんていなくなればいい。  抱き寄せた華奢なはずの肩に強く指先が食い込めば、肉感的な跳ね返りを感じた。性急に組み敷いたような激しい心持ちだが、慣れとは恐ろしいもので、実際は痛がらないように丁寧に扱っている。 ーーこのまま、良い?  無意識に言葉が紡がれた。
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