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般若の面
結婚した当初、部署内では『意外性があるけどお似合い』なんて言われていた。
俺たちが付き合っていたことを知らない人もいたらしく、冷やかしの声をたくさんかけられた。
周囲が派手に祝福してくれていると勝手に浮かれていた。その度に美穂の表情が曇っているとも気づかずに。
新婚旅行でまとめて休暇を取得したせいで、暫くは休日が重なることは無さそうだ。
「そろそろ同じ日に休みを取っても良いでしょうか」
残業も続いていたし、自宅での会話や、新婚にも関わらず夜を共にする時間が急激に減少したことを懸念して、部長に直談判をすることにした。
「嫁さんは嫁さんの方で、申請すれば良いんじゃないか。部署が違ったら、私だけの采配では難しいよ」
どういうことだろうか。とりあえずその場では話を合わせておいて、人事部の知り合いに連絡を取った。
美穂は、俺に何の相談も無いまま、異動願いを出していた。
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