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数日後。私はひとりでわちゃわちゃしながらホットワインを作っていた。お店のものほど豪華で繊細な味にはならないけれど、手作りには手作りの良さがある。
片手鍋に赤ワインを注ぎ、蜂蜜、砂糖を入れて火にかける。スパイスはあまりきつくならないようにクローブを少々。しばらく弱火で煮詰めたら、オレンジのスライスを入れて苦味が出ないうちに火を止めて出来上がり。ふわりと甘い匂いが部屋にただよう。
それをカップに注いで、ベッドで横になっているクレイグさんに持っていく。普段隊服姿できりっとしているクレイグさんも格好いいけれど、部屋着で無防備なクレイグさんも可愛いな、こんにゃろう。もちろん、そんな欲望ダダ漏れなセリフは、内緒である。
「はい出来上がりましたよ」
「ありがとう」
「まったく、クレイグさんったら。だからあの時言ったのに」
デートの約束をしたのはいいものの、クレイグさんはその後すぐに風邪を引いてしまった。本人はあの時上着を貸したせいじゃないって言い張っていたけれど、絶対にそのせいだよね。
この寒空の下でずっと半袖っていうのは、やっぱり無理があると思うの。本当に申し訳ないということで、こうやって押しかけて看病をしているってわけ。いつもより潤んだ瞳、かすれた声がなんてこったい、セクシーだぜ。
「君が風邪を引かなくて本当によかった」
「もう、そんなことばっかり。きちんと風邪が治らないと、お出かけできませんからね!」
「それは困ったな」
そんな無防備な顔をさらされていると、むしろ私の方が困っちゃいます。あの時のデートの約束は、ちゃんと守ってもらいますからね!
「本当に、まったく困ったものです」
頬にそっと口づける。唇はまだだ。それはやっぱり、クレイグさんからしてほしいから。予想外だったのか、クレイグさんが目をまんまるにして固まってしまった。やはり、可愛い。
「ひとに風邪をうつすと、早く治るらしいですよ」
「……非常に魅力的な誘いだが、遠慮させていただく。だが、ヒルダ嬢が風邪を引いたら、全力で俺にうつしてほしい」
「もう、私ってそんなに魅力ありませんか?」
「忍耐力を試すのはやめてくれ。すでに理性が崩壊しそうだ」
「いけませんよ、クレイグさん。早く風邪を治してくださいね」
「君ってひとは……」
「次はこの間のお店でホットワインを買って、お買い物をしましょうね」
しっかりと指を絡めて指切りをすれば、また少しだけクレイグさんの理性が揺らぐのが見えた。
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