やつれた顔

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やつれた顔

次の日も日曜日だったので綾瀬里香と吉本洋子は 世田谷の廃校した小学校の一室で赤井順に小説の 書き方を教えてもらっていた。 今日は自分の短編小説を二時間で書くと言う課題を出された。 テーマは学校だった。二人はそれぞれの学校を テーマにした短編小説を書いた。 赤井順は 「ここを直してもっと驚く展開に犯人はだいたい この怪しくない頭のいい生徒だと思うだろう? 怪しくない人が犯人だからね大抵。 僕なら影の薄いこの子の裏の顔を少し書いてこの子の親友を犯人にするね。 読者に犯人がわかったら面白くない」 里香はそう指摘された。 洋子はこの廃校した小学校で殺人事件が起きる ミステリーを考えた。洋子も赤井順から 「これはなかなかいいね。でも話の内容が聞いた事があるような内容だ。 犯人はこの学校の卒業生で動機もはっきりしてる。吉本さんの作品は内容に問題があるね。 次までに二人ともその作品を直してくること。 では今日の授業はこれで終わります」 二人は 「ありがとうございました」 そう言って小学校を出た。 いつも帰りに二人はお昼までの授業なのでお弁当を公園で食べてから家に帰っていた。 授業二日目の今日も近くの公園でお弁当を食べながら二人は小説の事を話していた。 「さすがに作家さんは凄いわね」 「本当に鋭い指摘だったわ」  二人は小説の話になると時間を忘れてお弁当を食べながらお喋りをしていた。 そしていつものように自宅に帰った。 その日から二人は家では御飯もろくに食べずに小説を書いたり読んだりしてほとんどの時間を家で 過ごすようになった。 そして、月曜日二人は学校に向かった。 里香の友人の桃子と七海は里香の顔を見て驚いた。  「里香❓️大丈夫❓️顔色悪いし、やつれてる」 「里香❓️ご飯食べてる無理してるんじゃない❓️」 二人は里香を心配していた。 「今日、学校帰りに何か食べに行こうか? 里香の誕生日でしょう❓️里香の好きなもので いいわ」 二人は里香にそう言った。 里香は 「回転寿司が食べたい」そう言った。 桃子と七海はその言葉に驚いた。 「里香❓️生物食べられるようになったの? 行きつけの安いレストランじゃなくていいの❓️」 二人はそう言ったが里香はいつもと違う低い声で 「私は生物好きなんだよ」そう言った。 里香の瞳はいつもの高校生らしい輝いた瞳では なかった。どこかどんよりどす黒い瞳をしていた。  二人は里香の事が心配になった。 その日は七海と桃子とはあまり話さずに休み時間になると里香は隣のクラス向かった。 七海と桃子は心配になり 「隣のクラスに何かあるのかな?」 二人は里香の後をつけた。 「何してるのかしら里香❓️誰と話しているのかしら❓️」 二人は里香に声をかけた 「何してるの❓️」 里香は 「隣のクラスの吉本洋子さんと小説の事について お喋りしてたの。私と一緒に小説の勉強を してるの。赤井順のサイトに登録したんだって。」 七海と桃子は里香に合わせて 「そうなんだ~宜しくね」そう言った。 な.ぜ.な.ら……。吉本洋子の姿は誰にも見えないの だから。 七海 桃子 里香の三人は学校が終わると回転寿司に向かった。そこで里香にいろいろと聞こうと思っていた。 里香は吉本洋子を誘いたいそう言ったが今回は三人だけで行こう。話したい事があるから。 そう言って回転寿司に着いて席に座ると驚いたことに里香は生物が嫌いなはずなのにたくさんのお寿司を食べた。七海と桃子は里香に話した。 「里香、赤井順の授業は辞めた方がいい。 それに目を覚まして吉本洋子なんて最初からいないのよ。 あなたは隣のクラスで一人で喋っていたの。  私の携帯を見て、録画したわ」里香は恐る恐る 七海の携帯を見た。 里香は一言話した……。 「何言ってるの❓️ちゃんといるじゃない❓️」   里香には吉本洋子の姿が見えるようだった。 七海と桃子はお寿司をたくさん食べながら いろいろな里香との思い出話をした。 遊園地に行った話し、見た映画の事などいろいろな話を里香に話した。誕生日で盛り上がる話をした はずだった。 でも、盛り上がっているのは桃子と七海の二人だけだった。 里香の何の話しかわからない様子に七海や桃子は 心配になった。 そして、七海と桃子はここにいるのは間違いない 私達の知ってる里香じゃない。 里香の中に誰かいる……。 二人は里香に言った。 「あんた誰❓️」 「里香の中にいるあんたは誰なの❓️」 「里香にとりついているあんたは誰なの❓️」 里香は青い顔をしてうつ向いていた。 そして、二人にこう言った。 「お前達うるせえんだよ‼️私は里香だよ」 そう言うと自分の食べた分のお金をテーブルに置いて二人を怒鳴りながら鋭い目で睨み付けてお寿司屋を出て行った。 桃子と七海は 「私達には見えなかった吉本洋子の事を二人で調べてみよう」そう誓った。 七海は隣の教室に友人がいたのでその友人に自宅に帰るとすぐ電話をかけた。 「吉本洋子って生徒~麻里ちゃんのクラスにいる❓️」 麻里の答えは 「誰その子❓️そんな名前の子いないよ」 そう言った。 ならあの子はいったい誰❓️ 七海は妙な胸騒ぎを覚えた。
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