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病室で
七海と桃子は昨日救急車で運ばれた「赤井順」と「綾瀬里香」の事を心配していた。
でも二人は週末にお見舞いに行くことしかできなかった。里香の母親の舞と父親の五郎はできるだけ
着替えなどを持って病室に行くと言っていた。
里香の両親は二人に何度も里香を助けてくれてありがとうと御礼を言った。
「七海~まだ里香の意識戻らないのかな?」
「桃子、週末にお見舞いに行ってみよう」
「そうね心配だわ赤井順にも色々聞きたいし。早く良くなってもらわないと」
二人はそう言いながら細井高等学校の教室の一年B組のドアを開けた。
案の定クラスメイトから二人は質問責めだった。
「綾瀬さんの具合どうなの?」
「幽霊にとりつかれたって本当?」
「赤井順って人も入院してるの?」
二人はクラスメイトからの質問責めに隠していても仕方がないし、そのうちばれる事だから正直に全てを話した。
その中でクラスメイトの南田順子が言った。
「取り付いた幽霊って担任の鍵屋先生のお兄さんの亡くなった娘さんって本当?でもそれなら何で名字が違うの?」七海と桃子もそれは気になっていた。
そこへ担任の鍵屋陸が教室に入って来た。
するとすぐに南田順子は名字の質問をした。
「みんなもう、全部知ってしまったのか。
確かに里香に取り付いたのは、兄貴の娘だよ
名字が違うのは、洋子は鍵屋という名字を極端に
嫌っていた。
あの子は最近行方不明になった人気小説家の
吉本薫に憧れてペンネームを吉本洋子にしたんだよ。
デビューする事だけを夢見てた洋子は、才能を有名作家さんに認められたと言っていた。
その作家さんに小説の書き方を教えてもらっていたんだ。
あと少しだったんだよ。
あと少しでデビューする事ができたはずだったんだよ。
そして先生「担任」に吉本洋子と呼ぶようにと洋子は言ったんだ。だから未だに私はつい癖で吉本洋子と言ってしまうんだ」
教室ではクラスメイトがみんな吉本洋子が可哀想だと言って涙ぐんでいたが、七海と桃子は
クラスメイトに言った。
「だからって、小説家になれなかったからって亡くなってから人に取り付くなんて許されることじゃない‼️涙ぐむなんて変よ。里香のほうが被害者なんだから。里香は未だに意識不明なんだから」
クラスメイトに桃子と七海は怒って言った。
クラスは一気に静まり返った……。
週末二人はお見舞いに病室を訪れた。鍵屋先生と
二人は病室で会った。
赤井順と綾瀬里香の意識はまだ戻らなかった。
そこへ里香の母親の舞と父親の五郎が病室に来た
「あら、先生 桃ちゃんも七ちゃんもありがとうね。まだ意識が戻らないの~ごめんね心配かけて
ありがとうね~わざわざお見舞いにまで来て
もらって」
そう言うと里香の母親の舞は七海と桃子にバックからノートを取り出し二人に渡した。
「これ、里香の日記二人に読んでほしくて」
二人は渡された日記を読んだ。
そこには、里香が悩んでいる様子が書いてあった。
2021年6月10日佐久間美子が賞をとったので
テレビで記者会見をクラスで見ることになった。
私も負けていられない。
悩んだ末2021年6月11日私はミステリー赤井順
投稿サイトに登録した。
その日から私の身体の中に誰かいるような
気がした。
声が聞こえる気のせいだろうか?
身体がだるい思い感じがする。
私の中のもう一人の私が私に声を掛ける。
「あなたの中にこのまま居させてそうしたら
有名小説家させてあげる」
私は何の事だかわからなかった。
私は6月19日から世田谷の廃校で赤井順に小説の
書き方を教えてもらっていた。
でも、夜になるとまたあの声が聞こえる。
「私達はずっと友達のままでいましょう」
「この声~吉本洋子さんの声に似ている何で?」
私は昔の新聞をこっそり調べていた。
「もしかしたら吉本洋子さんは亡くなっているの
かもしれない。それからずっと私の中に吉本洋子さんがいるような気がした。
私は、吉本さんお願いだから私の身体から出て
行ってお願い何度も頼んだ。
吉本さんは私が小説家になりたいと思うほど
私の身体にいる時間が長くなっているような気が
する。ある日吉本洋子さんは言った。
里香さん、お願いお願いだからもう少しだけ
もう少しだけ私の友達のままで……私はあなたの中が一番長くいられるみたい。
二人で小説家の夢を勝ち取りましょう」
その言葉が日に日に強くなってくる。
そして私はだんだん私じゃなくなっていく。
私の意識が消えていく……。
身体が自分の意思とは違う方向に歩いて行くことが多くなった。
意識が消えたら私はどこに向かっていくのだろう?
7月1日木曜日七海と桃子が私にお寿司を奢ってくれた私の誕生日だった。
あれ?私、生物食べられなかったのに夢中で食べているなんで?まるで吉本洋子に操られている
みたい。私は何故かイライラして二人に怒鳴って
店を出た。帰り道、聞こえるだんだん煩く私の
身体の中から聞こえる。
「里香さん私の友達でいて、もう少しだけもう少しだけ頑張って有名小説家になって一緒に夢をつかみましょう」そう言われて私は世田谷の廃校に隠って
小説をずっと書いていく事にした。
私の夢と洋子さんの夢の為に、私達はずっと小説を書くことにした。
私の身体の中から
「もう少しだけ友達でいてもう少しだけ頑張って」
そう聞こえる限り……
そのノートを見た七海と桃子は
「何で?私達に相談してくれなかったの?」
二人の目には涙が溢れていた。
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