佐久間美子

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佐久間美子

一週間後、佐久間美子はテレビで見ない日は 無いというほど有名になっていた。 クラスでは毎日のように佐久間美子の話で 盛り上がっていた。 「昨日見た?」 「見た見た~ドキュメント若いのに才能って番組 でしょう?」 「自宅で小説を書いている様子とか映っていたよね?」 「いろいろなテレビ番組に引っ張りだこじゃん」 「あまり学校に来られないねー」 クラスのみんなはそんな話しばかりするように なっていた。 そこへ担任の鍵屋陸が教室に入ってきた。 「ほら、席に着け~。ま~た佐久間美子の話をしてるのか?その佐久間美子の事だけどマスコミが 煩いし学校の勉強も出来ないとの事で引っ越す事になったよ。 出版社が近くにある世田谷に引っ越すとの事だ そして細井高等学校も中退して小説一本にする 予定だそうだ。 今日は、自ら佐久間美子が挨拶に来ている。 急な話で先生も驚いているんだ。 今日一日は学校で普通の授業をしたいとの事だから。みんな普通に接してやってくれよ。 あくまでも小説家の佐久間美子ではなくて クラスメイトの佐久間美子としてだぞ~わかったか~」 先生がそう言うと 「はいわかりました」 クラスメイトの声が教室に響き渡った。 先生の言葉の後、佐久間美子は教室に入って来た。 「今まで仲良くしてくれてありがとう。 急だけど引っ越す事になったの。今、荷造りの途中 なの~なるべく早く世田谷の光映社と言う出版社 近くに引っ越す予定なの。 今日一日はみんなと普通に楽しく勉強できたらと 思ってます」 そう挨拶をすると佐久間美子は自分の席に座った。 綾瀬里香は正直面白くなかった。 「何で❓️何で世田谷❓️あいつと離れられると 思ったのに❗」 桃子と七海は 「大丈夫❓️里香❓️世田谷って広いじゃない。 偶然に会ってしまうなんて事ないよ」 二人は里香にそう言った。 その日、クラスメイトはいつもと変わらない授業を受けていた。 ところが休み時間になると佐久間美子の机の前には長い行列ができていた。 みんなノートに佐久間美子のサインを書いてもらう為だ。 サインを貰うとみんな喜んでいた。 里香と桃子と七海はサインなんかに興味はなかった。 三人は佐久間を無視していたが、佐久間から里香に話し掛けて来た。 「綾瀬さん達ともっと仲良くしたかったけど無理 だったみたいね。元気でね」 佐久間はそう里香に話した。 里香は 「私ね~あるところで明後日から小説家の先生に 勉強教えてもらうの。私もね世田谷で勉強するの‼️だからあなたには絶対負けられないわ」 そう佐久間に綾瀬はハッキリと言った。 「世田谷ってどの辺りなの❓️」 「ここよ❗世田谷では有名らしいわ。何人も有名作家になってるってSNSでは有名よ‼️」 里香は地図と住所が書いてある書類を佐久間に 見せた。 ところがその地図を見た佐久間美子の顔はだんだんと青ざめていった……。 そして、里香に言った言葉は意外な言葉だった。 「綾瀬さんそこは確かに有名よ。 私が何度も行ってる出版社の近くだわ。 でもそこは廃校の小学校なの。その廃校の小学校で小説の勉強をしていた人が何人かいたわ。 それなのに覗いてみるとそこで勉強してる生徒は いつも一人か二人そして一人でホワイトボードに 話し掛けている。 教えてくれてるような先生もいない。 なのにそこの学校で小説の勉強をすると必ず有名になる。でも、その代わりに……」 佐久間美子が続きを話そうとすると里香は怒って  佐久間に言った。 「有名になれるならいいじゃない❗邪魔しないで何なの❗あなたは有名になったからいいけど 私が有名になることまで邪魔しないで❗」 そう言って里香は教室から出て行った。 その後も何度か佐久間は里香に話の続きを話そうとしたが、里香が逃げていく為、とうとう佐久間は 話の続きを話せないまま帰宅時間になってしまった。 桃子と七海は 「何か佐久間美子~里香に言いたそうだったけど いいの?聞かなくて?」 そう言って心配していた。 でも、里香は 「いいの いいの。だって~あいつ~そこで小説の 勉強すればみんな有名になるって言ってたもの 私は小説で、佐久間美子より有名になれればそれでいいの」 里香はそう二人に話した。 桃子と七海は里香の事が心配だったが 「頑張ってね。応援するね。何かあったらいつでもラインでも、電話でもいいからしてね」 そう言ってくれた。 明後日から始まる小説の勉強の初日から不可解な事が起きる事になるとはこの時、里香は、 何も知らなかった……。
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