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祈るような恋をした。
気づくのが、あと三秒早かったら。
そしてあと三秒早く、私が動き出せていたら。
「彼方――!」
慌てて伸ばした手は、届かない。
もう少しだけ、あと少しだけ、自分が間に合っていたならば。
「いやあああああああああああ!」
目を見開いて、線路に落ちていく彼。直後列車が入ってきて、肉と骨が引き潰れる音と絶叫に全ては掻き消された。
十一月三十日、火曜日。
それはありふれた悲劇の、救いようのない惨劇の日。
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