過去の私へ

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 今どこにいますか?  私は私を探しています。十年前…二十年前…三十年前…いや、もっと前にいるかもしれません。  聞いて。  当たり前と思って過ごしてきた日々が、人生の折り返し地点を目前にして、突然壊れます。そして、想像もしなかった耐え難い、苦痛の日々が訪れます。  自分のすべてを否定されます。多くの敵に敗北して、長く続けた仕事を辞めざるをえなくなり、みじめな生活を送っています。十年前の私、たぶんとても許せない状態だと思います。収入は半減以下、朝もぐうたら、酒も栄養ドリンクもまったく飲まず、真昼間から近所のカフェでオーガニックのランチとか食べて帰宅したら、読書をして文章を書いています。  二十年前の私に打ち明けます。男なんかもういらんと思ったのに、仕事と金さえあれば生きていけると思ったのに……完全降伏してしまった不思議な男性に会いました。彼に会って、私の人生はますます堕落しました。  三十年前、いや、もっとかな……その頃の私に懺悔します。こっぱずかしくなるような青春のときめきの日々を、まさかこの歳で送ろうとは思ってもみなかったよ。そんなもの……と小馬鹿にして勉強に打ち込んだ中学生の私は、やはりすごかった。歴史や文学や理科の興味も、語学の基礎も、みんなその頃が原点。  私は常に、自分の中に漆黒の開かずの扉があるのに気づいていたのだけれども、そう、それは突然開きました。ーー自分が何者かがわかって、その扉の奥を進むことが、残る人生を賭けて打ち込むものだとわかりました。  ある時期から自己否定が激しく太りに太った私だったけれども、自分史上今が一番痩せていて、若いのです。もうひとりで迷って、悩んで、世界に心を閉ざす必要はなくなりました。  だから、私はまだ出会えていない、閉じ込められた私を探しています。  今どこにいますか?
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