征服してください、魔王様!

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「ああそうだ。感謝の想いは、神の力。だが人間を信じていた神は、自身の頑張りが足りないからだと思い、さらに必死で世界の為に尽くした。苦しみを抱えながらな。頂点であった彼は、自身の苦しみを吐き出す事も相談する事も出来ず、ずっと内に抱え続けた」 「……それで、神様はどうなったの?」 「神の心が壊れるのと同時に、彼が持つ聖なる力が淀み、腐った。それによって神は悪しき存在へと変わり現象世界に堕ちた。彼に仕えていた天上人もろともな」 「そ、そんな……神様は、もう神様に戻れないの?」 「腐った力を浄化する方法はある。だが一度壊れた心――世界に対する愛や慈しみは、元には戻らない……二度とな」  少女の大きな瞳が見開かれた。  彼女なりに、話から何か感じるものがあったのだろう。  カノンの頭の上に手を置くと、ノヴァは少し疲れたように目を細める。 「もしその馬鹿な神が、自分の苦しみを誰かに相談する強さを持っていたら、そいつは今でも神であったかもしれないな。まあ私が伝えたいのは、『祖国を征服しろ』とまで思うに至ったお前の苦しみや悩みを、誰かに相談しろって事だ……取り返しがつかなくなる前にな」
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