征服してください、魔王様!

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 *  ノヴァの姿は、グラーヴェ王国の城内にあった。  彼の横を、手を繋ぎながら歩くカノン。二人の後ろをグロリアが歩いている。  王女を救うべく立ち向かってくる兵士や騎士たちを魔法で行動不能にしながらやって来たのは、玉座の間だった。  娘の姿を見つけた瞬間、玉座に座っていたグラーヴェ王トベルク=フェニ・エルドネスタ・グラーヴェが立ち上がり、憎々しげに叫ぶ。 「魔王ノヴァ……カノンが急に姿を消したのは、貴様の仕業だったのだな。何が望みだ? 娘を人質にして、この国を征服するつもりか⁉」 「元々は世界征服の足掛かりとして攫ったのだが……まあいい。カノンよ、今こそお前の苦しみを、父親にぶつけるが良い」  ノヴァはカノンから手を離すと、そっと背中を押した。  不安そうにこちらを振り返る彼女に、大丈夫だと小さく頷くと、少女は決意を決めたように唇に力を込めた。 「お父様。新しい女の人がお父様と結婚したら……わ、私とお母様は捨てられるのでしょうか⁉」  あの日、カノンが語ったのは、父が近々新しい妻を迎える不安についてだった。  しかし誰にも相談出来ず、膨らみ続けた不安は、いつしか父親への不信感と嫌悪へと変わり、家族を裏切った父が治める国など征服されてしまえ、という過激思考へ発展したわけだ。  で、彼女の悩みを聞き終えたノヴァによって、 「ならば、直接父親に聞きにいけばいい。今すぐな!」  てな感じで半分強制的に連れ出され、今に至る。
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