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娘の言葉に、トベルクの表情が固まった。
父の表情から、自分の問いは肯定されたのだと勘違いしたカノンが、さらに顔を青くする。
二人の様子を見ていたグロリアが、咄嗟に間に入った。
「グラーヴェ王、貴方は御世継ぎを残す為、側室を迎えようとしているのですね? 貴方が過去、リアーナ王妃と結婚され王となった時、直系ではないからと酷く揉め、争いにまで発展した過去があるから」
「そう……だ。もう二度と、あのような血なまぐさい争いはしたくない。カノンにも必ず危険が及ぶからな。しかしあの子が産まれて十年間、私たち夫婦は男児を授からなかった。王位継承権は男児にのみ与えられるもの。だから……仕方なかったのだ」
この決断を下す為に、彼もかなり苦悩したのだろう。胸の前でぎゅっと両手を握ったまま動けずにいるカノンに、弱々しく微笑みかける。
「カノン、不安にさせてすまなかった。お前はまだ幼く、このような話は早いと思ったのだ。だが信じて欲しい。リアーナやお前をないがしろにするつもりはない」
「で、でも、お母様はとても悲しそうにされています! 大好きだって言ってたお母様を悲しませるお父様なんて、大嫌い! そんなお父様が治める国なんて……魔王様に征服されてしまえばいい!」
「カノン‼」
響き渡ったのは父親トベルクではなく、ノヴァの怒声。
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