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「……私は、お父様とお母様が苦しみながらも下した決断を受け入れます。大嫌いって言ってごめんなさい、お父様……」
「謝るな、カノン。幼いからとお前の気持ちを蔑ろにした私たちが悪いのだ。私は、お前もリアーナも愛している。これから先、変わらず、な」
父の言葉を聞いたカノンが、トベルクに駆け寄った。飛び込んで来た娘を、太い腕が抱きとめる。
少女の嗚咽が広間に響いた時、
「カノンっ‼」
「お、お母様っ‼」
声と共に現れたのは、王妃リアーナだった。娘の声を聞きつけ、周囲の静止を振り切ってやって来たらしい。
結い上げた髪は乱れ、頬がこけ、瞳の下には寝不足によるクマが出来ている。しかし憔悴しきってもなお、彼女の持つ美しさは損なわれる事なく、この場にいる皆の視線を奪っていた。
リアーナはカノンを抱きしめると崩れ落ちた。そんな二人を、包み込むようにトベルクが抱きしめる。
親子の再会を皆が見守る中、ノヴァだけは眉を顰めていた。
ちらっとグロリアに視線を向けると、彼も同じ事に気づいているのか、鋭い視線を王妃に向けながら小さく頷く。
「グラーヴェ王、貴方の奥方、呪われていますよ」
「の、呪われている⁉」
王と王妃、王女の視線が一気にグロリアに集まった。
口元を緩ませながら、ノヴァが続きの言葉を引き継ぐ。
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