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「お前たちには見えないだろうが、妃の下半身に黒い靄がかかっているのだ。呪いによって子を成せぬ体にされたのだ」
ノヴァが指を鳴らすとリアーナ王妃の呪いが実体化した。
立ち上る黒い靄を見た王妃の悲鳴が響き渡る。カノンは混乱する母親にしがみ付こうとしたが、妻を抱きしめるトベルクの腕に阻まれ、グロリアが優しく少女を母親から引き離した。
玉座の間にいる者たちからも、驚きの声が上がっている。
驚愕する人間たちの様子を愉快そうに見つめながら、ノヴァはくくっと楽しそうに声を洩らす。
「せっかくだ。術者に王妃の呪いを返してやろう。楽しいだろうな? 呪いを返された者は、もう二度と子を成せぬ体となるのだから――男であっても」
そう言った瞬間、常にトベルクの傍に控えていた身なりの良い男が一歩引いた。視線が泳ぎ、玉座の間の出口に向けられる。
「逃がすか!」
「う、うわぁぁぁっ! や、やめろぉぉぉっ‼」
男の絶叫と、躓き倒れる音が響き渡った。
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