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リアーナの靄が、逃げようとした男の下半身を包み込んだのだ。奇声を上げながら床の上で暴れている男を見るトベルクの瞳が、何かに気づいたように見開かれる。
「リアーナに呪いをかけたのは宰相、お前だったのか! 自分の娘を、私の側室とする為に‼」
どうやら、トベルク王が迎えようとしていた側室は宰相の娘だったらしい。つまり奴は、自分の娘に跡継ぎを産ませ、権力を手に入れようとしていたのだ。
良くある話だ、とノヴァは大きなため息をつくと、疲れて息を切らしてへたり込む宰相の前に立った。
愚か者の末路を侮蔑を込めて見下しながら、魔王らしい黒い嘲笑を向ける。
「残念だが、その呪いは人間の力では解けぬ。私の力を上乗せしているからな。お前は一生、自分の血を残せぬ体となったのだ」
「そ、それがどうしたっ‼ すでに、私には子供が山程いる‼ 今さら種無しになっても――」
「もう二度と勃たないという素敵なオプション付きだぞ?」
それを聞いた瞬間、気丈に振る舞っていた宰相の全身から力が抜け、
「う、嘘……だ、い、嫌だぁぁぁぁ――――っ‼」
男として不能にされた悲しみの慟哭が、玉座の間に響き渡った。
ちなみにカノンの耳は、この内容はまだ十歳の少女には早すぎると判断したグロリアによって、途中からずっと塞がれていた。
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