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「って事で、今度こそ魔王らしく世界征服をしようと思う。手始めに、また王女カノンを攫うぞ。今度こそ、グラーヴェ王国を征服してみせる!」
「……よくまあ、前回散々貴方に振り回された私に対し、それが言えましたね? 心臓に毛が生えていらっしゃるのなら、さぞかし剛毛なのでしょうね?」
氷以上に冷たい視線で射貫かれ、ノヴァはうぐっと言葉を失った。
グロリアの言葉の鋭さが増している。でも許したげて。
グラーヴェ王国の騒動を解決し、疲れた、と言って眠ったノヴァ。
目覚めてスッキリすると、何故魔王なのにグラーヴェ王国を救ったのか、という疑問が唐突に浮かび、今度こそ世界征服をしてやる、と気持ちを新たにしたのである。
ノヴァは、グロリアの視線から逃れるように一つ咳ばらいをすると、両手をかざして転移魔法を発動させた。
今度は召喚相手を間違えぬよう、きちんと相手を指定する。
「現象世界を司るノヴァ・セレスティアルの名の下に、カノン・エルドネスタ・グラーヴェをここに召喚す」
魔法陣が輝き、溢れた光が部屋を満たす。
初めて召喚した時と同じ、チンチクリンな少女の姿が現れた――のかと思われたのだが、
「……ちょ、ちょっと待て! だ、誰だお前はっ‼ 私はまた間違ったのか⁉ い、いや、今度はちゃんと個人を指名したから間違えるなんて事は……」
現れた者を見て、激しく動揺するノヴァ。
それもそうだろう。
見た事のない美女が、彼の前でカーテシーをしているのだから。
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