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艶々な金色の髪、まるでサファイアをはめ込んだような深い青の瞳、スッと通った鼻筋、淡い桃色を宿す柔らかな唇。少女カノンのやせ細った体とは違い、女性らしい丸みを帯びている。
その美しさは、至高の美姫と呼ばれたリアーナ王妃以上。
彼女は姿勢を正すと、淡く微笑んだ。
「間違っていませんわ、ノヴァ様。私は、グラーヴェ王国第一王女カノン・エルドネスタ・グラーヴェです。貴方のお目覚めを、ずっと待ちわびておりました」
「で、でもカノンは十歳だっただろっ‼」
「あ、すみませーん。ノヴァ様がグラーヴェ王国の一件後に眠りにつかれてから、八年経ってたのをお伝えするの忘れてましたぁー」
「は、八年⁉」
「はい。あれから私の下に四人も妹弟が増え、賑やかな毎日を送っております」
「ちょっ、頑張りすぎじゃないか、お前の両親っ‼」
「もう世継ぎは安泰だと、ノヴァ様には両親共々感謝しておりますわ」
言葉を失うノヴァ。
もう疑いようがない。
目の前の女性が、十八歳になったカノンだという事を。
ちなみにグロリアは謝罪しつつも、驚く主の様子を可笑しそうに見ている。
(こ、こいつ……全部知ってて‼)
どうやら嵌められたらしい。
澄み渡った声が、ノヴァの意識を強制的に向けさせた。
目の前には、いつの間にかノヴァのすぐ真ん前まで近づいて来た、カノンの姿があった。両手を胸の前で祈る様に握りながら、小首を傾げて愛らしく尋ねる。
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