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「ふふっ、私は貴方に救われてからずっと、お慕い申し上げておりましたので、何一つ問題ございませんわ。魔王でありながら相手の気持ちを思いやるなど……ノヴァ様の事、益々好きになりそうです」
「って感じで了承済なので、これからは溜めに溜めた仕事を、ビシバシこなして頂きますからねっ‼」
「き、貴様って奴はぁぁぁぁっ‼」
魔王の絶叫は、扉が閉じられるとプツリと途切れた。
先程の騒動などなかったかのような静けさが、執務室に流れる。
グロリアは大きな欠伸をすると、今までの疲れを労うように両手を高く上げて伸びをした。
ノヴァを魔王たらしめている聖なる力の淀みを浄化するには、体を動かさなければならない。
しかし淀みは鉛のように重い。
動きたくても、すぐに疲労で動けなくなり、長き休息を必要としてしまうのだ。
(しかし、カノンがいれば嫌でも動かざるを得なくなるだろう)
荒療治だが仕方ない。
八年前、カノンから貰った絵と感謝の言葉に、嬉しそうにしていたノヴァ。
魔王に堕ち悪役を気取りながらも、
壊れた心は二度と戻らないと言いつつも、
主の本質は変わらないのだと、改めて思う。
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