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2.取り留めのないもの
最近、随分sexをしていない。
彼がそういう事をしたいというのはわかってたけれど、あの日以来、こういうことは彼も口に出しては言わなくなった。
男のそう言った欲望が如何に下劣なのか、無意識下で、彼自身わかっている。そういうものが私を損なったことに憤りを感じているのも。
私としては、この問題に折り合いを付けるべきだと、思っていたけれど、どうやらそんな単純な事ではないらしい。これは問題なのだ。
性行為に及んだクライアント、上松康二その男は、やたら、私にベタベタして来た。最初は、やってることの意味が私自身よくわからなかった。だんだん接触の度合いが増してくるので、流石に、吐き気がした。
彼は、私に感じる?なんて、変な事を言っていた。私は彼に卑屈に歪んだ笑顔を向けて、なんとか、関係性が壊れないように怯えていた。
彼と偶然だが、近所で犬を散歩していた彼が私を見るのが何故か、動揺していたのを、私は見過ごさなかった。
お互い、引き攣った笑顔を向けて、不自然なぎこちない会話をして、去っていった。
私は私で、その頃浮気をしていた。年下のまだ、少年みたいなガキンチョだった。
ミサカ、というハンドルネームで、同じ芸術家の端くれとして、精を出していた同期だったが、年齢が若く、まだまだ私から見れば、小僧だった。
ミサカは大人しい子で、今時珍しい程、幼い顔立ちをして、私は何故か、性的に惹かれた。
ミサカ、
そう呼ぶと、彼はなに?と子供のように素直に寄ってくる。
私は、それをいいことに彼に、胸を触らせた。まだ、オンナに対して、それほどがめつくなかった彼を、良いことに、私は大人のオヤジが生理的嫌悪感だったし、その頃、マークとは上手くいっていなかったのもあって、していた。私のせいでこんなことになったのに、それを都合の良い様に、自分はミサカを使って、性欲の処理をしている。私もミサカを侵している様な罪悪感がなきにしもあらずだったので、流石に後悔する様な気がしていたが、その頃人生に行き詰まっていた、私はその行為を良心が咎めなかった。実際、ミサカは確かに良いカタチの性器をしていた。彼はおとなしくて、私が興奮していたのを、どんな目で見ていたんだろう…彼の陰毛、彼のペニス、そして、彼の睾丸…しかし、彼は依然として勃起はしなかった。何処かで誰かに付け狙われているかもしれないと怯えていた私は、バッシングが怖かった。
ミサカは、それをやはりマスコミに売った。私の言動は、全て記事のネタになり、私はミサカとは、それ以来会っていない。
取り留めのない事だ。私は今のことしか、考えていない。今が満たされるなら、何を利用したって良い。私が満足するならなんでも、買えばいいし、処理したら良い。
過去に縛られるのはもう、沢山だ。
髪を掻き上げ、私は珈琲カップを手に取り、一口啜る。
随分時間が立ち、冷め切った珈琲は、砂糖の甘い味が理解できた。
甘めにして、といつもここに来たら店員には言っていたのを、私は思い出したのだった。
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