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* 恋愛カロリー *
***
「ジロちゃんは、今どこにいるのかなあ?」
「え、一緒にいるじゃ……」
「ううん。隣にいるのはジロちゃんじゃない」
「「……へ?」」
放課後、教室で見かけたジロちゃんとまゆはクラスでも有名なバカップル。
特にまゆはジロちゃんにベタ惚れで、学年のみならず、学校中で二人は有名だ。
そんなまゆのキツい口調に呆気に取られる。
どうやらそれはジロちゃんも同じようで……。
「え、と。まゆ、何……言ってるんだ?」
「ジロちゃん、確かに私はジロちゃんが好きだよ? でもね、私を好きじゃないジロちゃんに興味はない」
「え、え……」
顔面蒼白でテンパるジロちゃんに対して、まゆは冷静沈着。
いつもラブラブビームを飛ばしていたまゆの熱量から信じられないくらい冷め切っている。
「? どうゆうこと? ジロちゃん? てか、まゆ。どういうこと???」
同じクラスメイトであり友人であるとは言え、第三者であり部外者であることは承知している。とは言え、まさに私の目の前で始まった痴話喧嘩をスルーするほどの屈強な心臓も持ち合わせていない。
ならば、もう……腹を括って、尋ねる他ないだろう。
「ジロちゃんの好きと、私の好きの大きさが違うことは分かってた。だけど、私といても心が違う人に向いて行ったジロちゃんと一緒に居続けるほど、私も無粋な真似はしたくない」
「……まゆ」
なるほど。
ジロちゃんの心がどこに行ってるのかと尋ねたわけ、か。
そういうことなら、まゆの質問も理解できる。しかし、しかし……。
「まゆ、待ってくれ。話を聞いてくれないか!!」
「嫌。これ以上、ジロちゃんを軽蔑したくない」
「まゆ……っ!!」
なんで、また。私が荷物を取りに教室に戻ったタイミングで、そんなディープな話をしてくれるんだ!!
「まゆーーーーーっ!!」
三流映画もびっくりの展開にドン引きしながら、友人のまゆに引きずられながら教室を後にする。
「ごめんね、紗奈。こうでもしないと、私……私……」
「……あー。いいってことよ」
私の制服の裾を掴み、声を出すこともなくポロポロと涙を流すまゆの頭を優しく撫でる。
前振りなしで、修羅場に出くわしていい気はしない。
だけど、まゆのジロちゃんへの熱量も知っているから責められない。
ただただ好きなだけでは、続かない。
同じ恋愛カロリーでなくては、続かない。
二人の仲が空中崩壊した結果、余剰の恋愛カロリーはどこに行き着くのだろう。
そんな詮ないことを思いつつ、まゆから流れる涙を静かに見守っていた。
【fin.】
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