:A.D*

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毎日毎日の光景だった。 うちのおかあさんはモニターを繋いでテレビに繋げた 我が子の虐待写真やレイプ写真を、観るのが日課だ。  こんな異常なことがあっていいのか? って、最初は思ったんだけれど どうやら国が推進しているから、異常なことじゃないらしい。 取り上げたら、機嫌を損ねてしまう。 面白い、面白いねとおかあさんはよく、私に話を振る。 そんなとき、私はそっと部屋を出て 全然面白くないよと独りで呟く。 おかあさんやめて、って、言えないから、私はそれを遠巻きに見ていることにした。 私がどんな気持ちで遠巻きに見ているかっていうと、無にしている。 刃が、突き刺さる。 刃が、突き刺さる。 刃が、突き刺さる。 刃が、刃が、突き刺さる。 ずっと、ずっと、ずっと、突き刺さるけれど、私はそれを止める術を持っていないし、私はそれを止める術を持っていたところで、結局テレビがラジオに、ラジオが新聞に変わってしまうだけだろう。 おかあさんの、視界に入るすべてが、私がかわいそうなすべて。 私は、かわいそうなのか、わからなくなってきた。 果たして、私はかわいそうなのか? 「田中さん、田中さん、私は、かわいそうなの?」 部屋に訪ねてきた田中さんが、私の腕を引っ張っていく。 テレビに夢中だからおかあさんは気付かない。田中さんが来たついでに 勉強机から立ち上がり、そういえば、宿題をしなくちゃと思い出したまま、私は、聞いた。 「おかあさんが、楽しんでいる。私は、かわいそうなの?」 片手にビデオを構えた田中さんは、にっこりと笑って、 嬉しそうに、「どうだろうね」と言う。自分の出した汚物の片付けもできないダラシナイ大人たち。 「例えば会社。 普通は部下がお客様へ被害を出したら会社としても謝罪しない? なんで、きみの周囲は、分断して他人事のように扱いなのかな……」  責任を、擁護人、わざわざ個人的にピックアップしていったのは、『その他は白ですよ』と保護する意味でやったんじゃないらしい。  ノリノリで、延滞意見推しでくるから、この人達、同じ穴のムジナじゃんと、こっちこそビビった、らしい。 田中さんがペラペラと語りだす。 私は、わからなかった。 そもそも、かわいそうとは何をさすのだろう? 私は、わからなかった。 そもそも、私は、私なのだろうか。 「やばいよ、こっちが事件の輪郭を明確にアピールしてあげてんのに、明確になればなるほど、他人事で済ます! そんなコトやってる企業ないから。社会に通用しねえよ。非常識にもホドがありますからぁ!なんであの会社怒られないのかな」 田中さん、悪人のくせに そんな風に会社をディスっている。 よく、わからないけれど、 無法地帯っていうらしい。 「さっ、おかあさんが、今日のビデオを待ってるよ」 田中さんはそう言って、私のシャツを片手で摘まんだ。 頷いてボタンに手をかける。 あぁ、私も、趣味がほしいと、思った。
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