第3章

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 そのときだった。レイコさんの携帯電話のコールが鳴った。両手を添えるようにして電話に出たレイコさんは、いつになく慌てた様子で小声で話し、すぐに下着を身につけると、土砂降りの空のような自虐的な微笑みを浮かべて懇願した。  ──ゴメンなさい、今日は帰ってほしい。  薄いピンク色の、花柄のカーテンの隙間から紺碧色の夜空が見えた。オレは何となく察するところがあって黙って部屋を後にした。それが男からの電話であろうと確信していたし、相手が彼氏だろうということも……  そしてオレは、はじめての女性(ひと)であり何度もセックスをしていながら、一度もレイコさんに好きだといってなかったことを後悔しはじめていた。紺碧色の夜空には、たくさんの星たちが見守るように(きら)めいていたというのに……
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