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【episode2-残酷な問い 】
彼は、アメリカ人のお父様と日本人のお母様の間に生を受けたハーフである。
お父様は米軍基地にお勤めされていて、母国にご家族がおられる方だった。
ハルくんはいわゆる私生児なのだ。
お母様は幼い娘を背中に背負い、いつも儚げな表情で台所のシンクに向かっていたように記憶している。
ハルくんは5才だったので、本来であれば幼稚園の年中さんだ。
だが、通園をしていなかった。
ある時、何気なく「ねぇ、ハルくんは幼稚園に行かないの?」と聞いてみたことがある。
その時に、「僕が幼稚園に行っちゃうとお母さんが寂しがるから…。」と言ったハルくんの哀しげな笑顔は今でも忘れることが出来ない。
大人になった今となれば、偶にしか顔を見せない父親から多くの支援は受けられなかったのかもしれないと想像がつく。
年端のいかない私の幼く無邪気な疑問だったとはいえ、残酷な問いかけをしてしまった。
彼の大人びた優しさが、苦労の上に育まれたものだと気付くほどに、私の胸はチクチクと痛むのである。
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