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【episode5 - 失ったもの】
母が、ハルくんのお母様に暴言を吐いてから間も無くのことだった。
我家が、人手に渡ったのである。
騙されて家を失ったのだ。
庭には砂場や鉄棒があり、花咲く大きな庭が好きだった。
近所には富裕層の邸宅が多い土地柄だったため、部屋にはたくさんの外国土産が並んでいた。
だが、引っ越した先の小さな家には、花が咲く庭も、おしゃれなインテリアもない。
苔むした泥を踏みしめて玄関に向かい、古い木戸を開けると湿っぽく薄暗い部屋が広がっていた。
そこには、大好きなハルくんの笑顔もない。
私の心は、カビ臭い泥にまみれて次第に壊れていったのである。
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