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【episode7 - 雪解けの先】
壊れかけた私の心を唯一救ってくれたのは、窓辺で煌るガラス細工だった。
誰かから頂いた外国土産だったように記憶している。
南瓜の形をした置物は、太陽の光を浴び美しい光を放っていた。
ハルくんの瞳の色を思わせる透明感と煌めきは、私の心を慰めたのだ。
そんな日々を重ね、雪解けを迎えた春のことである。
私は、母と共に以前住んでいた街を訪ねた。
母子ともに仲の良かった友人宅にお邪魔したのである。
母とおばさんがお茶を飲みながら話に花を咲かせている中、私と友人はこっそりと街探検に出かけた。
しばらく歩き、ある角に差し掛かったとき、私の小さな心が跳ねた。
ハルくんの家がない。
彼と過ごした古いアパートの建物も、日が落ちるまで座って話し込んだ外階段も全て消えていた。
記憶の中では、昨日のことのように思い出せるのに。
幼い私には理屈や難しいことなんて考えられるはずがない。
だが、なぜか分かった。もう一生会えない。
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