15人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
ぱつぱつという音に顔を上げた。
空が暗いとは思っていたが、とうとう雨が降り始めたようだ。みるみるうちに窓ガラスは水滴だらけになる。
「やだもう、雨降ってきたじゃん!」
不安をかき消そうと、わざと大きな独り言を言って、ベランダに干してある洗濯物を取り込んだ。
パパったら、雨が降るってわかってるのに洗濯物も取り込んで行かないなんて。傘も持って行ったのかわからないし。
干していた洗濯物は、雨に少し濡れていた。やだな、もう一回洗濯機回さなきゃ。顔を顰めてベランダの扉を閉める。
しんとした部屋に、雨粒が窓を叩く音が響き渡る。冬の入口の11月の雨は、暖房をつけているのになんだか肌寒く感じさせた。
なんだか無性に不安になって、私は無意味に立ったり座ったりした。鉛筆を握って算数ドリルに向かうも、何一つ頭に入ってこない。
「そうだ!」
ポン、と昔アニメで見たのと同じ動作で手を打つ。
「パパに電話してみれば良いんだ」
パパの電話番号は、固定電話のところに置いてあるメモ帳に書いてある。今時固定電話のある家は珍しいらしいが、これはおばあちゃんからもらったものだ。
携帯を持ち始めたおばあちゃんが「七海ちゃんが家にいる時、使える電話があったら便利だろう」と譲ってくれた。
使い方はパパに教えてもらった。まずは番号を押して、受話器を上げる。簡単だ。
「ええと。ゼロ、ハチ、ゼロ……」
メモを見ながら、数字のボタンを押す。間違いがないか3回確認して、受話器を上げた。
呼び出し音が鳴る。この音を聞くと毎回緊張してしまう。頭の中で話すことを考えていると、プツッと音がして電話が繋がった。
「もしもし? パパ、今どこにいるの?」
「あ、イツキ。今どこにいる?」
私の声と、電話の向こうの女の人の声が重なった。
「……え?」
「……あれ? イツキ、では、ない……?」
最初のコメントを投稿しよう!