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泣きながら道を歩く。私の家は商店街にあるから、外灯が照っていて、暗いことはない。夜の商店街には誰もいない。時々おつかいに行くお惣菜屋さんの前を通り過ぎ、学校の友達に人気の駄菓子屋さんの前を通り過ぎる。
まっすぐに進んで商店街を抜けると、いつもの神社に辿り着いた。
「あれっ? 今日はまだお祭りじゃないよね?」
神社の中は明るかった。ふらふらと引き寄せられ、鳥居をくぐる。すると、境内のあちこちに吊り下げられた提灯に灯りが灯っていた。その光景は幻想的で、私はしばらくの間、呆けたように光を見つめた。
ふと、後ろを振り返る。神馬像と目があった気がした。私は石造りの馬に近づくと、その優しい顔を見上げた。昔、牧場で乗ったポニーに似た顔をしている。私がポニーに乗って馬場を回る間、お父さんはカメラで写真を撮り、お母さんはにこにこと手を振っていた。
あの頃は、皆、仲良しだった。
私は、台座に上ると、神馬像の背中によじ登った。石の馬は、ポニーのように柔らかくはないけれど、視界が高くなり、本物の馬に乗ったような気持ちになった。首に抱きついたら、ますますあの時のことを思い出し、私の目に涙が浮かんだ。
「このまま、この馬が駆け出して、空へ上っていけばいいのに」と、私は願った。
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