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いつの間にか、私は、神馬像の上で眠っていたらしい。
「三奈~! 三奈~!」
「三奈! おーい!」
名前を呼ぶ声が聞こえ、目を覚ます。すると、
「あそこにいる!」
誰かが駆け寄ってくる気配がして、そちらを向くと、お父さんとお母さんだった。神馬像の下まで来ると、
「三奈、どうしてこんなところに? 下りておいで」
お父さんが私に向かって手を広げた。
「ああ、良かった……!」
私は、お母さんが私を見上げる瞳が涙で濡れていることに気がついた。
おずおずと神馬像から滑り降りる。途端に、お母さんが私の体を抱きしめ、
「良かった。見つかって、本当に良かった……」
震える手で、何度も頭を撫でた。
お父さんが、私をお母さんごと、両手でぎゅっと包み込んだ。「皆、大切な家族だよ」と言うように。
私は二人に、
「……お父さんとお母さんはリコンしないよね?」
と、小さな声で問いかけた。二人が息をのんだ気配がした。
少しの間の後、お母さんが優しく、
「しないわ」
と言ったので、私はほっとして、心の中で「良かった」と思った。
けれど、それから一年経ち、私が私立の中学校に入学すると、お父さんとお母さんは離婚してしまった。私はお母さんに連れられて、おじいちゃんとおばあちゃんの家に引っ越した。おじいちゃんとおばあちゃんは、お父さんに対してすごく怒っていて、家でお父さんの話をすることはタブーになった。
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