神馬に乗って駆ける

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 それから十五年が経ち――。  教会の扉の前で、私はこれから結婚式を挙げる男性の腕に手をのせた。  顔をこわばらせている私に、男性が声をかける。 「緊張している?」 「少し」 「ふふっ、ガチガチに見えるけど」  私のそばには、白いドレスを着て花かごを持った女の子と、小さなクッションにのせた指輪を持っている男の子がいる。 「お父さん……どうしよう、ドキドキしてきた」 「僕も」  女の子と男の子は婚約者の娘と息子。女の子は九歳で、男の子は七歳だ。 「大丈夫。教えてもらったとおりにやればいいからね」  婚約者が優しく子供たちの頭を撫でている。 「ご準備はよろしいですか?」  ウェディングプランナーの女性が、私たちに笑顔を向けた。重厚な扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。教会内の人々の視線が、一斉に私たちの方を向いた。  婚約者が女の子と男の子の背を軽く押すと、二人はバージンロードを歩き出した。花をまくあどけない姿に、結婚式の参列者の顔に笑顔が浮かぶ。  私は、彼に手を引かれ、歩き出した。  本当なら、私を導くのは、お父さんだったはずだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加