運命のつがいと初恋 ④

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運命のつがいと初恋 ④

 シャボン玉がはじけるくらい、ほんの一瞬の気配の揺れで陽向の意識が浮上した。  でもまだ意識は蕩けていて開いたばかりの目をもう一度閉じると間違いなく眠れそう。  目に映ったのは東園の部屋の落ち着いたベージュの壁紙にマカボニーのような色調だけどアンティークには見えない広いデスクと小さなガラスの棚。  人気はない。  起き上がるといつ着たのか覚えていないがちゃんとパジャマを着ていた。  東園はもうリビングかなとベッドから出ると腹から腰、太ももまでだるく重々しい。  昨晩いつも使わない筋肉を使ったんだろうなとのんびり思う。  部屋から出ようとして、一般的にこういう朝は一体どんなふうに過ごすのだろうかと考える。痴態を晒してしまったからどんな顔をして東園と会えばいいのか分からない。  ため息交じりに扉を開くと階下から複数の声がしてぎょっとした。  扉を少しだけ開いて声を聞く。  バタバタと足音を立てているのは凛子だ、大人ではあんな音でない。しばらく聞いていると甲高い凛子の声がしたから間違いない。    凛子が帰ってきたということは、送ってきた人がいるわけで。耳を澄ますと東園の両親の声も聞こえ血の気が引く。  時計を見るともうあと数分で午後になる。    随分寝ていたんだなあ、とある意味感心してしまう。それだけ疲れたのかも。  しかしながらずっとここにいるわけにはいかない。二階にいて良かった、陽向はそっと東園の部屋を出て陽向の部屋へ向かった。  ひやっとする部屋から着替えを持ち出し東園の部屋に戻った。ああ、こっちは暖かいなと思う。    パジャマを脱いでセーターと綿パンに着替えた陽向はまたそろっと階下を窺う。  こんな時間まで寝ているシッターって、首になったりしないかな。自己都合の練習による疲れでは言い訳にならないかも。  ……いや、日曜日は勤務外だった。  階段を一歩降りたとき、階下まで走ってきた凛子が「ひーたん」と叫んで飛び跳ねた。 「あ、りんちゃん髪切ってる、可愛い!」  顎より短いボブになった凛子はグレーのワンピースを着ていた。  いつも幼児向けブランドの洋服を着ている凛子だが、本日はもう一段上に見えるワンピースだ。  階下に降りて久しぶりの抱擁をした凛子と陽向の脇に、東園が寄ってきた。
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