運命のつがいと初恋 ④

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 ふと扉がきしんだ音を立てたような気がした。小さすぎて気のせいなのか分からない。  陽向は眠りに片足突っ込んだままそっと身体をそちらに向ける。廊下の光を背後に受けた人物がいる、顔がよく見えないが東園しかいないから間違いない。  音を立てないように歩み寄った東園は横になっている陽向の額に唇を寄せ「もう寝た?」と囁いた。  凛子はすでに深く眠っているようで、東園が近づいても寝息のリズムは変わらない。  頷くと腕を引かれ、陽向は音を立てないようにベッドから出た。東園は手首を握ったまま、陽向を廊下まで連れてくると今度は陽向を背後からぐいぐい押す。自分の部屋の前まで来ると今度は陽向の髪に顔を寄せたまま背後から腕を伸ばし部屋の扉を押し開いた。  え、と思う。 「馨、まさか今日も練習するの?」 「毎日ね」  当然といわんばかりの堂々とした答えに思わず黙った陽向だが、「明日起きられなかったら困るから今日はちょっと」と部屋に押し込まれながらも断った。  振り返った陽向を強く抱きしめた東園は黙ったままだ。あんまり長く包まれていると東園の匂いに酔ってしまいそうになる。  それに広い胸の中は心地がいい。  顎を掬われ顔が近づいてくる。深く舐め吸われることがどんなに気持ちがいいか、陽向は昨日知ったから、重なる瞬間胸が高鳴った。  舌が絡むキスは身体が熱くなる。  口では断ったくせに、と自分でも矛盾を感じながら東園に溺れてしまう。  東園の手が背中をまさぐり、そのうちに下着の中へ移動してきた。尻の合間に指が侵入すると、陽向の身体はびくりと震える。  ぷつっと唇が離れそこを追うように見上げると、目前の東園はにっと笑ってみせた。 「ちょっと濡れてるけど」 「……え、今日は抑制剤飲んだのに」  昨日は夜飲まなきゃならない抑制剤を、飲むまもなく練習が始まってしまった。だけど今日はすると思っていなかったので凛子の寝かしつけ二ラウンド目の前にちゃんと抑制剤を服用したのだ。  今まで普段の性欲もわりと抑えられていたのに、今回の薬もやはり効かないのか。発情期の相手を見つけたとはいえ少々落胆する。  しかしそもそもαに触られたΩはこうなるものなのかもしれない。  発情期で苦しむことのなかった陽向は、自分以外のΩ性の人と発情に関して話したこともなく、そういう記事を検索したこともなかった。  もしかしたら、目の前の東園は今までの経験から知っているのかもしれない。 「もう抑制剤飲む必要ないだろう」  耳元で囁かれまた唇が重なった。  深い口づけを受けながら多分もう、東園に他のΩの事を聞けないだろうなと思う。  明日ちゃんと起きなくちゃ。今強く思っても数秒後には忘れてしまう事を陽向はもう知っていた。
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