運命のつがいと初恋 ④

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「陽向、おはよう。時間だ」  少しかすれた低声がセクシーだと思う。教えたことはないけど。  さっきから頬や額に口づけられてうっすら意識があった陽向だが、もうそろそろちゃんと起きないとなと思う。  なんとなく開きづらく目を擦ると、髪を撫でていた東園が陽向の手を握り目から離す。     目元にキスをした東園はもう一度おはようと囁いた。 「もう起きなきゃ」  上体を起こすと東園が巻き付いてやたらとキスをしてくる。 「もうちょっと、遊ぶ時間入れて起こしたから」 「だめだ。遊びで終わらないじゃないか」  陽向はううんと伸びをして東園を振りほどきベッドを出た。  練習はきっちり毎日行われる。  予想通り二度目の練習翌日、寝過ごした陽向は平日はしないと強く主張した。が、東園に朝は自分が起こすからと押し切られ、今のところ毎日だ。  廊下に出てそっと凛子の部屋をのぞき見るとまだ深く眠っている。  昨日は幼稚園の日でしっかり遊んだからかもしれない。まだ寒いけど、やっぱり外遊びが必要だなと思う。  今日はお昼過ぎに近所にあるてんとうむし公園に連れて行こうかなと思う。  凛子は早く起こす必要がないので、まずは二人分朝食を作ることにした。 「智紀さんいつごろ到着ですか? りんちゃん、てんとうむし公園に連れて行こうかと思って」 「三時のおやつの時間には着くように来られるそうですよ。お外に出て身体を動かした方がいいですもんね」 「そうですよね。あそこまで10分も掛からないからお昼食べたあとちょっと出かけてきます」  東園宅固定電話に智紀から連絡があったのはそろそろお昼の準備をしようと話していた十一時半を過ぎた頃だった。  なんでも来週末のひな祭りのために、七段飾りを持って行くとのことだ。  ちょうどおととい陽向は凛子に教えながら折り紙のお内裏様とおひな様を作ったところだったから本物を見られるなんてラッキーだねと三浦と喜んだ。 「りんちゃん、りんちゃんのおひな様がくるよ」  昼食を作る手伝いの為キッチンにいる陽向から、リビングで音の出る絵本を読んでいた凛子に声をかける。  今日の凛子はピンクのトレーナーに紺色のズボンだ。凛子はズボンが嫌いだが、今日は公園に行くから、と説明するとしぶしぶ履いてくれた。  凛子は陽向の方へ顔を向けると和室を指さした。 「おひな様あるー」  和室に飾っていた折り紙のお内裏様とおひな様を指しているようだ。陽向はそうだねと頷いた。
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