運命のつがいと初恋 ④

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「智紀さんがお人形を持ってくるんだ。階段をつくって、たくさんのお人形を並べるんだよ。その隣にりんちゃんが作った折り紙のお内裏様とおひな様も並べようね」 「ともちゃん、おうちくる、やったー! いついつ?」 「三時のおやつの時間だから、それまでにご飯食べてお散歩して待ってようね」 「やったー」  凛子がリビングで遊びはじめ、三浦と陽向はキッチンへ戻った。 「りんちゃんは本当に智紀さん大好きですよね」 「ええ、ええ。よく懐いていらっしゃいます。引き取った当初は久々の子育てに戸惑ってらしたけど、そこはやはり母親、なんでしょうね」  今日は鶏塩うどんにするという。陽向は三浦の作る鶏塩うどんが大好きだ。大人には潰し梅のせてくれる。あっさりした出汁が美味しくて病み付きになる一品だ。  三浦が出来上がったうどんをテーブルに運んでる間に、陽向は取り分けた凛子用のうどんを食べやすい大きさにカットする。 「りんちゃんおいで。ご飯だよ」  凛子の椅子を準備し、手招きすると凛子は音の出る絵本を片付け寄ってくる。 「さあ、陽向さんも食べましょう」 「はい。じゃあ、頂きます」 「いたあきましゅ」  小さい手を合わせた凛子が子供用のフォークを握り食べ始める。今日はどのくらい食べるかな、と思いながら陽向も箸を取った。  食休みを経て凛子と陽向が東園宅を出たのが午後一時を過ぎた頃だ。  二月も終わり近づいたが、まだ外は寒い。  凛子はお気に入りのポケットにリボンの付いた薄紫のダウンを着ているので比較的ご機嫌だ。今日は公園遊びのあとも予定が入っているので、帰りもスムーズに誘導できそうだなと思う。  てんとうむし公園は東園家から二度曲がるだけの近場にあり、凛子も常連だ。  午前中から午後にかけては幼児の利用が多く、夕方は小学生が多い。  本当は地番の付いた名前が付いているが、公園の真ん中に砂場に囲まれたテントウムシのようなドーム状の遊具があるのでみんなからそう呼ばれている。  交通量の少ない道を通っていけるのも魅力で手を繋いでくれるときもあれば振り払って歩くこともある凛子を連れて行きやすい。  住宅地にある公園だが割と広く、いいことずくめのようだが三方が道路に面しているので、凛子がボール遊びをし始めたら注意が必要になるなと思う。
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