運命のつがいと初恋 ④

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 公園に入ると興奮した凛子が陽向の手を離し遊具へと走り出し、陽向も追う。  ドーム型の遊具は普通の階段、ロープを使って登る箇所、飛び石を使って両手両足を使い上る箇所があり、凛子は毎回全部制覇しないと気が済まないらしく登って滑ってを繰り返す。今日の凛子が走って行き着いた先は飛び石だった。  よいしょと登りはじめた凛子をいつでも支えられる距離で見守る。  なるべく助けを求めたときだけ手を貸そうと思っている、命の危険があるときは別だけれど。  飛び石は2列並んでおり、隣の列を凛子より身体の大きい男の子が登っていく。  年中さんくらいだろうか、身軽だなあと眺めていると凛子が同じようにしようと無理に右腕を伸ばし、しっかり掴まってないのに左手を離し、上手く掴めず滑らせた。 「あっ」  背から落ちた凛子を胸で支えるとびっくりした顔の凛子が顎をあげて後ろから抱き留めた陽向を見た。にっこり笑ってみせるが心臓が痛くなるくらいに驚いたし、冷や汗が背を伝う。 「りんちゃん、ゆっくりでいいんだよ。もう一回してみる?」 「うん」  元気よく返事をした凛子を砂場に下ろすと、再び登りはじめる。  目が離せないよな、と思いながら登る凛子を眺める。なんとか頂上まで行き着き、反対側の滑り台に向かっていった。  陽向も回り込み滑り台の傍へ行くと、凛子がよいしょと座り滑り降りようとしていた。  きゃあと声を上げ降りてくる凛子が手を振っている。  ずっと見ているというのは本当に大変だ。   でもこの笑顔があるから世のお母さん方は頑張れるんだろうなあ、と思う。 「りんちゃん、気持ちよかった」 「うん!」  おしりから砂場にダイブした凛子はぴょんと立ち上がるともう一回滑る、と今度は真裏の階段へ向かって走っていった。  智紀達が喜ぶので今度は写真を撮ろう。跳ねるように走る凛子の後を追おうと振り返った陽向の足にとんと小さな男の子がぶつかった。 「あ、大丈夫?」  砂場に手を突いた男の子はひょんと立ち上がるとにっと笑う。 「すみません、こうちゃん急に走ったら危ないよ」 「いえ。怪我がなくて良かった」  凛子よりちょっと身体が小さいから三歳前かなと思う。  こうちゃんと呼ばれた男の子は凛子と同じくダウンを着ていてもこもこのシルエットがなんとも可愛らしい。母親がズボンをはたいている間にも遊具に向かって行きたくてうずうずしている。 「お砂に飽きて今度はあっちです。お互い大変ですね」  母親は笑って、東屋の近くにある小さな蜂を模した乗り物を指した。  手を離した瞬間走り出したこうちゃんを追って母親は、陽向に一礼すると走り始めた。
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