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「りんちゃんっ、りんちゃんっ」
陽向も車を追って走り出す。
車は直進し初めの角を左に折れた。ナンバープレートの番号を覚えながら車が曲がったとおり角を折れると、車は忽然と消えていた。先の角を曲がったんだろうが、左右どちらに折れたのか分からない。
陽向は足を止め息を整えながらスマホで三浦に連絡した。
「もしもし、ひなたさん?」
「すみません、三浦さん、りんちゃんが誘拐されましたっ」
「えっ、誘拐っ? 嘘でしょ、凛子ちゃんそこにはいないんですか?」
「はい、警察に、連絡して下さい。テントウムシ公園で、黒いセダン車でりんちゃんを連れて行きました、男女の二人組です。ナンバー覚えているのでメモお願いします。番号は、」
陽向の言う番号を三浦が復唱したあと、陽向は「もう少し探します」と伝え電話を切った。
角まで再び走った陽向は周囲を見回し肩を落とす。見当たらない。
車が角を曲がって、すぐに陽向も角を曲がった。それで見失ったのだから、この最初の角をどちらかに曲がったのは確実だった。
膝に手を当て荒く息を吐き出す。
陽向がもっとちゃんと見ていれば、ちゃんと付いていれば、計画的だったとしても誘拐なんかされなかった。
どうしてべったり付いていなかったのか。
目を離してしまった瞬間を死ぬほど後悔した。
「りんちゃん」
声が震える。
連れ去られるとき、凛子は泣いていた。
うるさいって叩かれたりしてないだろうか、怖いことされていないだろうか。
凛子の不安を考えると心配で心配で堪らない。
両足が重たく感じる。陽向はよろよろとカブトムシ公園へ引き返した。
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