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三浦からコートを受け取った誠二郎と智紀は玄関へ向かった。
「もし、連れ去ったのがお母さんだとして、どこか行き先に心あたりはあるんですか?」
「思い当たるところはすべて当たったけどいなかった。でも凛子が一緒だったら必ず分かるはず。さあうちの威信にかけて見つけ出すよ!」
靴を履き振り返った智紀は陽向に拳を突き出した。呆気にとられる陽向の横で「なにか分かったら連絡くれ、こっちもするから」と東園が智紀の拳に自分のをこつんと当てた。
息巻いている智紀をうんうんと頷く誠二郎が連れて出たあと、陽向は東園とともに外で見送った。
「智紀さんはお姉さんが連れて行ったと思っているみたいだけど、本当にそうなのかな。もし誘拐だったら、早く警察に相談した方がいいんじゃないかな」
心配で堪らない。ダイニングテーブルに着いた東園と陽向に三浦はコーヒーを淹れながら「だいじょうぶですよ」と力強く言った。
「誠二郎様が個人的に繋がりのある警察関係の方に内密でご相談されていますので」
「そうなんですね」
「顔が広いからな、あの人は」
陽向はほっと息をついた。
あらゆる方面から捜索してくれているんだ、早く見つけてあげて欲しい。
顔の前で指を組んだ陽向にどうぞと三浦がコーヒーを置いた。
「もうしばらくですよ、私も凛子ちゃんはすぐ見つかると信じています」
陽向は祈るように組んだ指に額をつけたまま小さくうなずいた。
「陽向寝ないのか」
三浦が帰宅し、陽向はリビングでぼうっとテレビを見ていた。見ていたと言うよりテレビの方を向いていた、が正しいのかもしれない。
そのテレビと陽向の間に割り込んだ東園はソファに座る陽向の視線に合わせ屈んだ。
「うん、もうちょっと。馨寝てて」
すぐそこにいる東園はふうと息をついて、陽向の額に手を当てた。
咳もしていないし鼻も垂れていないけれど、風邪引いたと思ったのだろうか。熱はないな、と呟いて東園は二階へ上がっていった。
もうそろそろ十時になる。
普段凛子はもう寝ている時間だが、今どうしているのだろうか。ちゃんと眠れているかな、ベッドはあるのだろうか。床に放置されていたらどうしよう。眠たいのに寝られるわけない。
ソファの上で膝を抱えながら凛子のことを考える。もうあれから八時間は経っている。
早く見つかって欲しい、早く帰ってきて欲しい。
いま自分はここで待っているだけしか出来ないのか。やっぱり探しに行った方がいいんじゃないか。
「陽向、寝てる?」
呼ばれて顔を上げると毛布を持った東園が正面に立っていた。
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