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ゆるゆる首を振ると東園がほらと陽向の身体に毛布を掛け隣に座った。
寒いと思っていなかったけれど、身体を覆う毛布の中に生まれた熱が心地よく感じた。
「馨は、寝ないの?」
「そうだな」
「膝、掛けたら」
陽向を覆っていた毛布を半分、東園の身体に掛ける。東園と触れている腕も温かく、お互いの体温を交換している感じがする。
凛子を思うと心配と不安で苦しいし、今日起こったことを改めて振り返ると自分の生命をかけても足りないくらいの責任が生じていると思う。
そんな懸念事項がいくつも胸に溜まって重たく感じるけれど、身体が温かくなるとほんの少しだけ、力が抜ける気がする。
「あの、連絡来てる?」
「まだ来てないよ」
「そう」
ため息を落とした陽向の肩を引き寄せ東園が陽向の額に口づけをした。
斜めになった陽向を東園が支えている。
ニュースが終わり、CMの軽快なメロディが流れる。
しばらくぼうっとしていると、幼稚園のクラスで流行っているというお菓子のCMが始まった。最近ヒットしたドラマに出ていた子役の男の子が幼児でも真似できる簡単な振りで踊っている。
凛子もこれが流れると真似て踊っていたなと思う。
「これ、このあいだ凛子が踊っていたな」
「うん。園で流行っているって。……りんちゃん、今なにしてるんだろう、泣いてないといいけど」
言葉が尻つぼみになる。
泣いていないわけがないと思うからだ。夜、家じゃないところにいるんだ、寂しくならないはずがない。
東園が陽向の髪を撫でながら「大丈夫だ、連絡を待とう。どっちにしろ連絡してくれるよう言っているから」と囁く。
「もし誘拐ならここに電話が掛かってくるのかな」
「そうだな。ここか、会社か、だな」
きゅっと胃が痛くなる。
もし、もし誘拐だったら、もう連絡があってるはずじゃないのか。
警察には言うなとか、お金はいくら、とかそういう電話が。
「陽向、自分を責めるな」
「うん」
責めるなと言われても、無理だ。自分がもっとしっかり見ていれば、と思ってしまう。
「生返事だな」
「わっ」
強く抱きしめられ、東園の首筋に顔が当たる。そこから立ち上る東園の匂いはいつもより濃い。
Ωも首のうしろ、うなじを咬まれると番契約になるのだから、αにとっても首は強くフェロモンを発しているのかもしれない。
「陽向は悪くない、悪いのは攫った方だ」
抱きしめられたまま髪をすくように撫でられていると気持ちが落ち着いてくる。
不思議だなと思う。東園の首に鼻を押しつけ、匂いをしっかり嗅いでみる。
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