運命のつがいと初恋 ④

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 いつ眠ったのか、陽向は東園の寝室で目覚めた。  カーテンの隙間から陽の光がさしていて、ベッドから床まで光で線を描いている。  広いベッドに一人きりだ。  東園はもう出勤したのか、あるいは凛子を迎えに行ったのか。  壁掛け時計で時間を確認する、もう10時になるところだった。  また随分ゆっくり寝てしまった。  暖かい部屋から廊下へ出ると、裸足の足先が冷気で震えた。  付近に人の気配が感じられない。  階段から覗く一階にも誰もいないようだ。  三浦が来る時間は過ぎているけれど、と思いながら陽向はVネックのセーターとジーンズに着替え階下に降りた。  やはりそこには誰もいなかった。しかしダイニングテーブルにはランチョンマットが敷いてあり、上にベーコンと目玉焼き、トマトとアボガドのサラダ、小皿にクロワッサンと、朝食は準備済みだ。  三浦じゃなければ東園だろうか。東園にこれが作れるものかな、と思う。  もしかして陽向が寝ている間に智紀達が来たのだろうか。  首を傾げつつコーヒーメーカーをセットした陽向は連絡が来ていないか確認することにした。昨日の事を誰かにちゃんと教えて欲しかった。  スマホを見ると東園から数件届いていた。  そのメッセージには、東園は出勤していること、凛子は智紀達と一緒にいること、今回の件や今後について話し合うあいだ、智紀達の住む東園の実家にしばらく母親とともに凛子も滞在することが書かれていた。  凛子の顔を見られるのは当分先になりそうだが、とにかく凛子が安全な場所にいると分かってほっとした。  ふと、凛子がいないのに、シッターである自分がここにいていいのかなと思う。東園が帰ったらこちらも話し合い、かな。  とりあえず、腹ごしらえだ。  凛子が無事だと分かって陽向にようやく食欲が戻ってきた。  誰が作ってくれたのか分からないがせっかくあるのだから頂こうと思う。  ぴぴとコーヒーメーカーが終了の音を立てた。陽向はううんと伸びをしながらマグカップをカップボードから取り出した。  朝食を終え、やることもないから掃除洗濯をこなしていく。  昼近くになっても三浦からの連絡はなかった。昨日は遅くまでここにいてくれたし、陽向が連絡するとこちらに来るよう催促しているようで申し訳なく、連絡をしなかった。  しかし三時を過ぎる頃になると、買い物など家事の必要事項がありそうな気がして、ようやく陽向は三浦に連絡を取ることにした。  三浦の返信は早く、見ると三浦は今、東園の実家にいるという。  そちらで凛子の世話をしているとのことだった。  文面を見て、陽向は急いで三浦に電話を掛けた。     安全なのは分かっているが凛子がどうしているか、やはり気になるのだ。三浦は直ぐに出て、凛子の様子を話してくれた。そのそばで「だれ、だれ?」と聞いている凛子の無邪気な声が聞こえてきた。 「りんちゃんそこにいるんですか?」 「いますよ、ちょっと待って下さいね」
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