運命のつがいと初恋 ④

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 東園の感覚はやはり精度が高いんだなと思い知ったのは翌日の昼過ぎだった。  三浦と昼は簡単でいいね、と話したあと陽向が袋ラーメンにしようと提案した。  もちろん提案した陽向がハム、卵入りの醤油ラーメンを作って出した。  小さい頃、アニメの中で登場人物がラーメンを作って食べるのを見て、実家にいるときからよく作っていたのだ。これだけは自信があるのだ。三浦からも誉められてしまった。     馨さんにも作ってあげてくださいと言われたけれど、プロの料理を食べ慣れている東園の口には合わないと思う。曖昧に流したが作る事はきっとないだろう。  三浦は午後、凛子の荷物を届けるため東園の実家へ赴く予定だ。  午前中に日用品、衣料品や大好きな絵本、凛子の生活に必要なものを準備しているとスーツケース二つ分になった。  結局車じゃないと運べなかったので、免許のない陽向では持って行けなかったなと思う。  車で出かける三浦を見送って陽向は引き受けた昼食の片付けに取りかかった。  二人分の食器を洗いながら、テレビに顔を向けると、リビングに入る午後の陽光が目に入る。  いい天気だ。部屋を照らす光を見ていると、外に行きたくなってきた。  買い物、散歩でもいいな。  あっという間なや洗い終わり、寒いかなと思いながら手を拭いているとふと、東園に明日には発情期が来そうと言われたことを思い出した。  ソファに座って自分の匂いを嗅いでみる。やはり自分では分からない。  ただ万が一でも散歩に出た途中で発情してしまったら大惨事だ。周囲の人間みんなに迷惑を掛けてしまう。  本当に今日発情するとは思えないが、大事を取っておこう。  そういえば庭の芝に小さな雑草が混じってきていた。まだまだ寒いがもう3月だ。暇なうちに草取りでもしておこう。  陽向は外出を止め、リビングの窓を開きすぐ脇に揃えて置いてあるサンダルを履いた。  背中にあたる陽が暖かいが、空気はまだ冷たく風が当たると寒い。  芝の隙間から覗いている小さい草はなかなかに抜きづらく、根まで引き抜くのに一苦労だ。 「難しいんだな」  ひとりごちつつ最初に着手した玄関付近を抜ききった。数ヵ所は葉の部分だけ千切れてしまったので、そのうちにまた伸びてくるのかもしれない。  よし次の場所へ移動だ、と立ち上がると、その振動が頭に響き陽向はまた座り込んだ。
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